人身保護法の適用

人身保護法の適用(子どもの争奪合戦の最後の切り札)

_MG_30750020.jpg 親権者が定まらず離婚紛争が長引いてくると、業を煮やして、どちらかの親が子どもを力ずくで他方の親の元から引き離し、奪い去っていくということがあります。そのような実力行使は、長い目で見れば、親権者の決定の際の悪情状として判断されることでもあり、厳に慎むべきものではありますが、残念ながら離婚紛争において、まれに生じるものです。
 
そのような場合には、まず子の引渡し調停や審判の申立てを検討すべきですが、一刻も早く子どもをも取り戻さなければ取り返しのつかない事態になることも考えられます。その際に、使われる法律が人身保護法です。

人身保護法とは、不当に奪われた人身の自由を回復することを目的に制定された法律のことを指します。人身保護法の適用は夫婦間でかなり感情が高ぶっている時に実行するものであるため、子どもの争奪合戦の「最後の切り札」といわれています。
 
適用の仕方としては、現実的に相手方のもとに子供を留めておくと、子供に悪影響を及ぼすおそれがあり、一刻も早く子供を引き取る必要がある場合は、直ちに人身保護法の適用を求めて、高等裁判所または地方裁判所に請求するという流れになります。請求があってから、1週間以内を目処に審問が開かれます。審問で相手方の行動の違法性が認められると、子供の引渡しを命じる判決が出ます。 もし、相手方が判決に応じない場合は強制執行となります。
 
なお、子供が自分の意思で相手方のもとに行った場合は、人身保護法による救済を受けることができません。また、実の親であっても、親権者や監護者の承諾なしに未成年の子供を連れ去れば、刑法224条の未成年者略取、又は誘拐罪になりますので、離婚後の紛争で子どもが連れ去れた場合には、人身保護法の適用と合わせて刑事告訴・告発による解決を図るのも有効な手段です。

人身保護法を使うということに対する考え方

冒頭でも記載させて頂きましたが、人身保護法の適用を使用することは「最後の切り札」です。ここまでに至るケースでは、夫婦相当共に感情が高ぶっているため、代理人で関与する場合も未成年者の国選代理人で関与する場合も、本当に薄氷を踏む思いで、立ち会うことになります。
 
いずれにしても、子の引渡しをめぐる紛争については、子の引渡し紛争に理解のある弁護士に依頼して、適切かつ迅速な解決を図る必要があります。

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